児のそら寝の現代語訳とあらすじ解説!なぜ返事ミスで笑われたのか
古典の教科書でおなじみの『宇治拾遺物語』所収『児のそら寝(ちごのそらね)』は、平安から鎌倉時代にかけての人々の息遣いとユーモアが凝縮された傑作説話です。深夜に繰り広げられる「夜食を食べたい子ども」と「それに気づいた大人たち」の心理戦は、千年の時を超えて今なお読者の共感を誘います。
本稿では、定期テスト対策や学び直しに役立つ完全現代語訳をはじめ、児が返事のタイミングを見誤った心理的背景、重要文法・品詞分解のポイントまで徹底的に解説します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:『児のそら寝』は、ぼたもち(かいもちひ)を食べたい児が「一度で起きると食い意地が張っていると思われる」と見栄を張り、返事の機を逸する滑稽話である。
- 要点2:テスト頻出の「む」「けり」などの助動詞識別、係り結び、敬語の方向(誰から誰への敬意か)が満点奪取の重要キーとなる。
- 要点3:児の自意識過剰なプライドと僧たちのからかいという「登場人物の心情変化」を掴むことで、現代語訳の解釈と記述問題の得点力が飛躍的に高まる。
【全文現代語訳と原文対照】『児のそら寝』を読み解く
まずは原文と現代語訳を照らし合わせ、全体のストーリーと会話の流れを確認します。
【原文】
これも今は昔、比叡の山に児ありけり。僧たち、宵のつれづれに、「いざ、かいもちひせむ」と言ひけるを、この児、心よせに聞きけり。さりとて、し出ださむを待ちて寝ざらむも、わろかりなむと思ひて、片方に寄りて、寝たるよしにて、いで来るを待ちけるに、すでにして出で来にけり。思し食し立つこと、さだめてさぞありつらむと、心ざしあるやうに見せむとて、言ひ寄りたるなりけり。
【現代語訳】
これも今となっては昔のことだが、比叡山(延暦寺)にある稚児がいた。僧たちが、宵の所在なさに「さあ、ぼたもちを作ろう」と言ったのを、この児は期待を寄せて聞いていた。そうかといって、出来上がるのを待って寝ないでいるのも、みっともないだろうと思って、部屋の片隅に寄って、寝たふりをして、出来上がってくるのを待っていたところ、まもなく出来上がった。僧たちが「(児が)お思い立ちになったことは、きっとその通りであったのだろう」と、(児に対して)親切であるように見せようとして、声をかけてきたのであった。
【原文】
つねに寝たる人を起こすには、まづ驚かしてこそ起こし侍れ。「や、御気色悪しきか」と問ひければ、児、「うれし」と思ひけれども、ただ一度にいらへむも、待ちけるかのやうにやあらむと思ひて、いま一度呼ばれむと思ひて、寝たるほどに、「や、な起こしたてまつりそ。幼き人は、寝入りたまひにけり。あはれ、あな幼や」と言ふ声のしければ、あな、わびしと思ひて、いま一度起こせかしと、思ひ寝に聞けば、ひしひしと、ただ食ひに食ふ音のしければ、すべなくて、無期ののちに、「えい」といらへたりければ、僧たち笑ふこと限りなし。
【現代語訳】
いつも寝ている人を起こすときには、まず注意を引いて起こします。「もし、ご気分が悪いのですか」と尋ねたところ、児は「うれしい」と思ったけれども、たった一度呼ばれただけで返事をするのも、待っていたかのように(思われて恥ずかしいの)ではないかと思い、もう一度呼ばれてから返事をしようと思って寝ていたところ、「これこれ、お起こし申し上げるな。幼いお方は、すっかり眠り込んでしまわれた。ああ、なんと可愛らしいことよ」と言う声がしたので、(児は)「ああ、困ったことになった」と思って、もう一度起こしてくれよと、思いながら寝たふりをして聞いていると、むしゃむしゃと、ひたすら食べる音がしたので、どうしようもなくなって、ずいぶん長い時間が経ったあとに、「えい(はい)」と返事をしたので、僧たちが笑うことこの上ない。
【あらすじと心情分析】なぜ児は返事のタイミングを逃したのか?
この説話の醍醐味は、児の過剰な自意識とプライドが生んだ喜劇的なすれ違いにあります。物語の背景とオチの理由を心理面から掘り下げます。
比叡山の寺院において、貴族出身の美しい少年である「児(ちご)」は、僧侶たちから大切に扱われる存在でした。夜の退屈しのぎに僧たちが「かいもちひ(ぼたもち・おはぎ)」を作ろうと言い出した瞬間から、児の心の中で葛藤が始まります。
作られるのを起きてじっと待つのは「食い意地が張っている」と思われて恥ずかしい。そこで児は「寝たふり(そら寝)」を決め込みます。しかし、僧から「気分が悪いのですか」と声をかけられた際、児はさらなる計算を働かせました。「1回目の呼びかけですぐ返事をしては、待っていたのがバレてしまう。2回目に呼ばれたら起きよう」と企んだのです。
ところが僧たちは「起こすのはやめよう、すっかり寝入ってしまわれた」と食べるフェーズに移ってしまいます。聞こえてくるのは「ひしひし(むしゃむしゃ)」と美味そうに食べる咀嚼音。焦った児は我慢の限界に達し、長い沈黙(無期ののち)を破って突然「えい(はい)」と間の抜けた返事をしてしまいました。誰が見ても「ずっと起きて待っていた」ことが明白なオチとなり、僧たちの大爆笑を誘ったのです。
【品詞分解と重要単語】テスト直前に押さえるべき語句一覧
定期テストや入試で頻出する重要単語と品詞分解の要点をまとめました。
■ 最重要古語の意味
- つれづれ(徒然):手持ち無沙汰、退屈なこと。
- かいもちひ(掻餅):ぼたもち、おはぎのこと。そばがきや練り餅を指す説もある。
- 心よせに:期待して、関心を持って。
- わろかり(わろし):よくない、みっともない。(「あし(悪し)」よりはマイルドな否定)
- すでにして:まもなく、やがて。
- 驚かす:(人を)起こす、目を覚まさせる。※現代語の「びっくりさせる」とは異なる。
- いらふ(答ふ):返事をする、答える。
- あな、わびし:ああ、困った。がっかりだ、つらい。
- ひしひしと:むしゃむしゃと、しきりに噛む音。
- すべなくて(術なくて):どうしようもなくて、なす術がなくて。
- 無期(むご)ののちに:長い時間が経ったのちに。
【文法解説】助動詞の識別と「係り結び」のルール
文法問題で失点しやすい助動詞の意味決定と係り結びを徹底攻略します。
■ 助動詞の重要ポイント
- 「いざ、かいもちひせむ」:意志の助動詞「む」(〜しよう)。会話文中の「む」は一人称の意志を表す。
- 「わろかりなむ」:強意の助動詞「ぬ」の未然形「な」+推量の助動詞「む」(きっと〜だろう/〜てしまうのがよいだろう)。
- 「寝入りたまひにけり」:過去・詠嘆の助動詞「けり」の連用形・終止形。ここでは「寝入ってしまわれたのだなあ」という詠嘆の意味合いを含む。
- 「な起こしたてまつりそ」:副詞「な」+動詞連用形+「そ」で「〜するな(禁止)」の構文。「たてまつる」は謙譲の補助動詞。
■ 係り結びの法則
本文中には強調の係助詞「こそ」が使われています。
「まづ驚かしてこそ起こし侍れ」
係助詞「こそ」を受けて、文末の丁寧の補助動詞「侍り」が已然形「侍れ」に変化しています。口語訳は「まず目を覚まさせてから起こします」となり、手順の重要性を強調しています。
【敬語の識別】誰から誰への敬意かを完全図解
『児のそら寝』で出題率が極めて高いのが敬語の識別です。身分関係を正確に把握しておく必要があります。
1. 「御気色悪しきか」
・「御(おん・み)」=尊敬の接頭語。
・敬意の方向:僧たち ⇒ 児(身分の高い児への敬意)。
2. 「な起こしたてまつりそ」
・「たてまつり」=謙譲の補助動詞(〜申し上げる)。
・敬意の方向:僧たち ⇒ 児(起こす対象である児を高めている)。
3. 「寝入りたまひにけり」
・「たまひ」=尊敬の補助動詞(お〜になる)。
・敬意の方向:僧たち ⇒ 児(寝入った児の動作を高めている)。
4. 「起こし侍れ」
・「侍れ」=丁寧の補助動詞(〜です、〜ます)。
・敬意の方向:語り手(筆者) ⇒ 読者。
【定期テスト予想問題】頻出パターンと解答のコツ
実際の試験で狙われる定番の記述・選択問題を厳選しました。
【問1】「わろかりなむと思ひて」とあるが、児は何が「わろかりなむ」と思ったのか、簡潔に説明せよ。
解答例:ぼたもちが出来上がるのを起きて待っていると、食い意地が張っていると思われて体裁が悪いということ。
【問2】「ただ一度にいらへむも、待ちけるかのやうにやあらむと思ひて」における児の心理を説明せよ。
解答例:1回呼ばれただけですぐ返事をすると、起きるのを待っていたことが周囲にバレて恥ずかしいため、もう一度呼ばれてから自然に起きたふりをしようという心理。
【問3】「僧たち笑ふこと限りなし」とあるが、僧たちが大笑いした直接の理由は何か。
解答例:児を起こすのを諦めてぼたもちを食べ始めてから長い時間が経っているのに、児が今さら思い出したように「はい」と間の抜けた返事をしたから。
【児のそら寝 現代語訳】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:「かいもちひ」とは具体的にどんな食べ物ですか?
A1:一般的には「ぼたもち(おはぎ)」を指します。米や小豆が貴重だった当時、深夜の夜食として寺院で作られる甘いかいもちひは、僧や児にとって特別なごちそうでした。
Q2:「児(ちご)」とはどのような立場の子どもですか?
A2:貴族や有力武家から寺院に預けられた幼少の男子です。仏教の修行や学問を行う一方で、寺の賓客としての性格も持ち、僧侶たちから大切に慈しまれる存在でした。
Q3:なぜ児は「えい」と返事をしたのですか?「はい」ではないのですか?
A3:「えい」は当時の応答の言葉で、現代の「はい」に相当します。寝ぼけたような、間の抜けたニュアンスも含まれており、緊迫した我慢の末にこぼれ出た一言としての滑稽さを際立たせています。
まとめ:古典のユーモアを理解して得点源に変える
『児のそら寝』は、一見難しく思える古文の世界が、実は現代の私たちと何ら変わらない人間味や恥じらいに満ちていることを教えてくれる作品です。
単語の意味や文法規則の暗記にとどまらず、「児の見栄っ張りな可愛らしさ」や「僧たちの意地悪な微笑み」といった人間模様をイメージしながら読み進めることで、古文読解の精度は格段に上がります。テスト前の総復習には、敬語の方向と心情記述のポイントを重点的にチェックしておきましょう。 (出典: 児 の そら 寝 現代 語 訳(Yahoo!ニュース))